Story
4
TOWA TEI
テイ・トウワ
(音楽家)

“プラス”を求めるのではなく、
“マイナス”しながら生きていく。

2019.06.28 update
2019.06.28 update

翌月にはヒットしても、
翌々月にはダサい曲。
そんな音楽はつくりたくない。

いきなり元も子もないかもしれないが、テイ・トウワさんは普段、あまり腕時計をすることがないという。その理由は、これから紹介する彼の生活環境、そして生き方によってつまびらかになっていくが、「CODE 11.59 by AUDEMARS PIGUET」の印象をこんなふうに話してくれた。

「表現に迷いますが、4文字で言うなら“シンプル”。決して仰々しくないというか、重心が低くて、自分がつけるとしたらこういう時計をしたいと思う。“重心が低い”というのは音楽業界でもよく使う言葉で、僕らのなかでは褒め言葉。逆に“重心が高い”というのはチャラいってこと」

さすがにオーデマ ピゲが2019年から「モントルー・ジャズ・フェスティバル」とパートナーシップを結んだことまでは知る由もないが、初めて着用した腕時計を音楽的感覚で表現するあたりは、実に彼らしい。

「音楽は耳から入ったり、骨伝導もするから、視覚から入ってくる時計やファッションとは少し違う。最終的に脳が処理するのは同じかもしれないけど、音楽は人間以外の動物も聴いているし、植物も聴いている。地球も聴いているかもしれないし、もしかしたら宇宙人も隠れて聴いているかもしれない(笑)。僕自身、有名になりたいとはぜんぜん思っていませんが、“音楽”というところでは自分がつくったものをたくさんの人に聴いてほしいし、もっと知ってほしいという思いはある。音楽のいいところとして、自分がいなくなっても音は残りますから。だから、来月のヒットチャートとかはまったく意識していないです。25年前に『Future Listening!』というアルバムを出したときも、なんとなく25年後をコンセプトにつくっていた。僕が死んだあとだろうが、道ゆく人が聴いてもすんなり耳に入ってくるように。

たとえ古臭さを感じたとしても、“モダン”なものは残っていく、時空を超えられるもの。決して一過性のものではなくて、経年変化に耐えうるものだと思います。“シンプル”だったり“モダン”だったり、音楽に限らず、そういうものが好きですね」

残された時間を
意識すれば、
すべきことが見えてくる。

一過性の音楽は、テイ・トウワさんの眼中にない。とはいえ、“型”を知らなくてはならないという思いに駆られた時期もあったという。

「もっと譜面を読めなくてはいけないとか頑張っていた時期もありましたが、自分には向かないと思って。それを追いかけていくと、音大を出ている人は全員、自分よりも長けていることになるわけで……。だから、あるときから自分の選手生命を維持するためには、“型”を覚えたらいけないなと。いかにセオリーにとらわれずに音楽と向き合えるかを考えるようになりました」

2000年に生活拠点を長野・軽井沢に移した理由も、「やりたい音楽を、やりたいときにやる」との思いから。

「僕は年齢的にも、もっとお金が欲しい、服が欲しいといった、“プラス”の生き方はもう無理。みんな20代のころと同じようにプラスを求めすぎていると思う。僕はもっと“マイナス”していくことを上手にやっていきたい。“死生観”って決してネガティブなことではなくて、残り時間を意識したほうが、いま何をすべきかが明確になると思います。若いときは、口の中でトロけるような焼肉を毎日食べたいって思ったけど、今はお金をもらっても無理(笑)。でも、それでいい、変化していいと考えるようになりました。たとえば、根本的に目指しているものが違う人とは関わらないとか……それも引き算。人とは群れない。そんな時間はない。自分の時間、家族といる時間が好きだし、長野を選んだのも温泉が好きで、温泉に行くまでの時間を節約できるから。

普段、腕時計をしないのもそうで、音楽をつくっているときは常に手をカタカタと動かしているので、より音に没頭できる状態にしておきたいというか。あと、僕は自分のスケジュールを真っ白にしておくのが好きで、1年後のニューアルバムとか、ざっくりとした予定はあって、そこまでの時間を自分でどう使うかのタイムキープはしていますが……。でも、こんな仕事をしていなかったら、この時計を買いますね(笑)」

にはまっては、
そこから抜け出す。
それを繰り返し今がある。

にはまっては、
そこから抜け出す。
それを繰り返し今がある。

エレクトロニックなダンス・ミュージックの先駆者と評されるテイ・トウワさん。そのような意識はあるのだろうか?

「ないですよ。僕はたまたま音楽を好きになったきっかけがYMOで、たまたま今もお付き合いさせてもらっていて、そんなことは当時想像もできなかった。でも、僕には反抗期があったので、彼らがつくったレールというか、YMOがやりそうなことを自分が真似してもそれを超えられるわけがないし、すでに彼らがやっていることだし、だから彼らの音楽を忘れようとしたことが自分の音楽の礎になっています。どっぷりはまって、そこからどう逸脱するかっていうのがつながって今に至る。Deee-Liteというグループをやっていたときは、なんとか“型”にはまろうとしていた。外から見ると型破りな格好をしていた人だったけど、結果的には、いわゆるハウス・ミュージックとは違ったからあそこまでブレイクしたのだと思う。そのあとは、そこからはずれること、自分の音楽をやろうという25年間でした」

型にはまっては、それを破る。まさしく“BREAK THE RULES”。

「だって、YMOの真似をして『東風(トンプウ)』とか練習しているだけだったら、今みたいに高橋幸宏さんといっしょにメシ食えてないでしょ(笑)。楽器メーカーには悪いけど、今ほとんど音づくりはマウスと耳だけでやっている。そうしないと、できないなりに自分の“型”にはまってしまうから。型を破るというか、常に型にはまらないようにしています。でも、難しいですけどね。抽象的になっていけばいくほど自分もつまらなくなってしまうし、誰でもできるじゃんって。だから、ある程度はポップスというか、ダンス・ミュージックってことはぼんやり意識している。だけど、アルバムとして10曲とか並んだときに、日々大量のレコードを買っている身としては、聴いたことのないアルバムをつくろうという思いでやっています」

最小限の音で、
最大の効果をもたらす
音楽をつくってみたい。

彼の変名プロジェクトであるSweet Robots Against The Machineではお笑い芸人のバカリズムと共作するなど、常に私たちを楽しませてくれるテイ・トウワさん。そんな彼がいま思い描く未来とは?

「僕は映画がすごく好きなのですが、自分の好きな映画は音楽が少ないものが多い。たとえば『万引き家族』を観たときに、細野(晴臣)さんのあの音の少なさはすごいなと。少なくても最高に効いているし、“音効”している感じがミニマムであり、マキシマムだと感じた。昔、松本人志さんの映画『大日本人』の音楽を担当させてもらったのですが、初めてのことで何をどうすればいいかわからないことだらけで、自分としてはもっと違ったやり方があったのではという思いが残っていたのです。その後、坂本龍一さんと食事をしたときに、映画音楽を初めてやったという話をしたら、『サントラは画を見て、ここはもたないなってところから作るんだよ』って言われた。僕は真逆のこと、いちばん大事なシーンから作っていました。そんなこともあって、映像に音をつけるのはもういいかなと思っていたのですが、あの映画を観て、少し開けたものがありましたね。もちろん細野さんをなぞったりはしないけど、少ないなかでマキシマムに効果を出すという音効に興味をもちました。だから、予算なくても連絡ください(笑)。もちろんあったほうがいいけど、予算があってもなくても、音は少ないから(笑)」

“ミニマムであり、マキシマム”。彼が何気なく口にしたその言葉が、150年近い歴史で培われた伝統を守りつつ、常に時代の先端を走り、革新し続けるオーデマ ピゲ、そして「CODE 11.59 by AUDEMARS PIGUET」と重なり合った。

テイ・トウワ
(音楽家)
TOWA TEI

1964年、横浜市生まれ。1990年にDeee-Liteのメンバーとしてアルバム『World Clique』で全米デビュー。94年、アルバム『Future Listening!』でソロデビュー。現在まで9枚のソロアルバム、Sweet Robots Against The Machine名義で3枚のアルバム、METAFIVEのメンバーとしてもアルバムをリリース。アーティストとしてはもちろん、東京・青山にある「INTERSECT BY LEXUS – TOKYO」の店内音楽監修、2018年にはYMO結成40周年アルバム『ノイエ・タンツ』の選曲・監修を務めるなど、楽曲プロデュース、映画音楽制作、CM楽曲制作、そしてDJなど、その活動は多岐にわたる。

Photo:Kazunali Tajima(MILD)
Styling:Takafumi Kawasaki(MILD)
Hair&Make-up:Masako Ide(air notes)
Interview & Text:Satoru Yanagisawa
Edit & Direction:Shigenobu Sasaki(Condé Nast Creative Studio)

THE ROOM

新作「CODE 11.59 by AUDEMARS PIGUET」を試着できる
デジタルアート体験空間『THE ROOM』開設中

Information

会期 : 10月末まで
会場 : オーデマ ピゲ ブティック 銀座 1階 map

応募はこちら