Story
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Kogi “Poggy”
Motofumi
小木“Poggy”基史
(ファッションディレクター)

“型”を知らなければ、
“型破り”にはなれない。

2019.04.26 update
2019.04.26 update

どこにも属さない余裕、
先を見据えた
変化を感じる。

セレクトショップ「ユナイテッドアローズ&サンズ」でディレクター、バイヤーを務めながら、ファッションアイコンとして国内外から注目を集める小木“Poggy”基史。そんな彼の目に「オーデマ ピゲ」というブランドは、どのように映っているのだろうか?

「フィレンツェの老舗サルトリア、リヴェラーノ リヴェラーノのアントニオ・リヴェラーノさんがロイヤル オークを愛用していました。そういうクラシックなイメージと、2000年代初頭からのファレル・ウィリアムスをはじめとしたヒップホップの人たちが、それまでのダボダボなシルエットの服にジャラジャラとした小物で装うというファッションではなく、トラッドな服を着てオーデマ ピゲの時計をするというような、2つのイメージがある」

ブランドの象徴である「ロイヤル オーク」には、強い思い入れがあるのだという。

「ロイヤル オークは著名な方が多く身につけていることもありますし、何よりカッティングの美しさと、力強さを感じる。今のメンズファッションはストリート系のアプローチが多くなっていて、ビッグメゾンも話題作りのため半年ごとにコラボレーションを仕掛けたり、キャッチーなものが増えています。そんななか、ロイヤル オークには、どこにも属さない余裕、先を見据えた変化を感じるんです。この新作「CODE 11.59 by Audemars Piguet」も、そんなロイヤル オークに共通するようなディテールを受け継ぎながら、時計としてはかなり遊んでいるデザイン。僕はクラシックのなかにポップな要素を感じられるものに惹かれるので」

会社に「無理だ」
と言われたことも、
実現させた。

現在では当たり前のように叫ばれるようになった、クラシックとストリートの融合。そんな空気感をいち早く察知し、ユナイテッドアローズ在籍時、社内ベンチャー制度により立ち上げたのが「リカー、ウーマン&ティアーズ」。アーティストやスタイリスト、エディターなど感度の高い客層に支持を得たセレクトショップが誕生したのは、今からおよそ13年前、2006年9月のことだ。

「2000年代の初め頃、アメリカの『ヴァニティ・フェア』で誌面を20ページほどもさくような特集で、グランドマスター・フラッシュ、クール・ハークといったオールドスクールの人たちがドレスアップした記事を見て衝撃を受けた。その後もアメリカの『GQ』でファレル・ウィリアムスがトム ブラウンの服にグッチの靴を履いた誌面や、カニエ・ウエストがラルフ ローレンを着たりして、アメリカではヒップホップのアーティストがトラッドを着る流れができていたんです。当時、日本はロックファッション全盛。ストリートとセレクトショップの客層がはっきり分かれていましたが、日本もこの先、ストリート系の人たちがセレクトショップに買い物に来る時代が来るはずだと思った。企画書にはブルネロ クチネリからシュプリームまで、価格帯からテイストまで幅広いブランドの名前を書き連ねて、会社には『無理だ』と言われましたが、結局すべて実現した。長く続けることはできませんでしたが、あの時代だからこそ存在価値があったと思っています」

僕は常に、
ここではない場所を
探し続けてきた。

僕は常に、
ここではない場所を
探し続けてきた。

かのウォルト・ディズニーやケーリー・グラント、クラーク・ゲーブルなどのスーツを仕立てたことでも知られる、シカゴの老舗テーラー「オックスフォード・クローズ」のスーツに、ヴァージル・アブローが手掛けたルイ・ヴィトンのヴェスト。そして足元には最近復刻されて話題を呼んだ、コンバースの「チャックトグル」という、彼ならではの装い。

「リカー、ウーマン&ティアーズを立ち上げる前まではカジュアル畑で、ストリート系の人たちとの付き合いが多かったんですが、スーツを仕入れるにあたってカジュアルな格好ではまずいので、少しずつジャケットを着るようになりました。でも、昼間はそのような人たちと商談をするのでいいんですが、夜にはストリートのイベントに行かなくてはならず、そんな場所にバリバリのスーツでは浮いてしまう。着替えることなく、どちらにも対応できる格好を考えた末、自然と今のスタイルになったんです」

そう語る彼だが、ミックス感覚にあふれる装いからは、ファッションをはじめとするさまざまなカルチャーの多様性、多角性を許容していきたいという強い意思、そしてモチベーションが感じ取れる。

「日本人って、自分にとって心地のよい場所にとどまりたがるというか、わかる人だけに受け入れてもらえればいいという傾向が強いですが、僕は常に、こことは違う場所を探し続けてきた。あるブランドのヘッドデザイナーが言っていたんですが、そこは『こうでなくてはならない』という伝統が強く、もちろん最初は勉強になるんですが、ある程度すると若い世代はどんどん辞めてしまうと。ヴァージル・アブローのチームには日本でいうLINEのグループがあって、彼は部下の提案や質問にすぐ応えるそうです。あれだけ忙しいのに。若い人も『いっしょに働いている』という感じがするでしょうね。またいつか必ず、伝統的な、生粋のデザイナーのやり方が新たな形で戻ってくるときが来るとは思いますが、今はヴァージルのような、オープンマインドな時代だと思う。

先ほどのヒップホップのアーティストの話に戻ると、当時、日本人はディオール オムを“細いシルエットの服をつくるブランド”とイメージしていましたが、カニエは腰ばきしたジーンズに合わせたら面白いと考えていた。このCODE 11.59 by Audemars Piguetも見る人によって違った視点になると思う。それが面白いですね」

クラシックは点であり、
トラッドは点と点を結ぶ
線である。

ある人から見れば、小木“POGGY”基史は大胆なまでにルールを破っていると映るだろう。だが、彼の根幹を成しているのは“伝統”へのリスペクトであり、それを今の時代に合ったカタチで、次の世代に伝えていきたいという、強い意思だ。

「僕はある尊敬している方から、“クラシック”が点で、“トラッド(伝統)”が線であると学んだ。どんなに良いものでも、その時代で終わってしまえば“クラシック”となり、点で終わってしまう。上の世代の人たちが下の世代の人たちに良いものを伝えたい、若い人たちが古きよきものを学びたいと思う気持ち。そんな点と点をつなぐ線が“トラッド”であると。もちろん、その線の引き方は時代によって変わると思うんです。

ユナイテッドアローズの名誉会長、重松 理さんから教えてもらい、僕も大切にしている武道の思想で“守破離(しゅはり)”という言葉がある。まずは師匠から教わった型を徹底的に守り、そこから少しずつ自分らしさを身につけ、最後はその型から離れて自分の流派をつくるということ。やはりもとの“型”を知らないと型は破れないし、知らないまま破っても“型無し”になってしまいますから」

小木“Poggy”基史
(ファッションディレクター)
Kogi“Poggy”
Motofumi

1976年、札幌生まれ。 1997年ユナイテッドアローズに入社し、2006年に社内ベンチャー制度により「リカー、ウーマン&ティアーズ」をオープン。 2010年には「ユナイテッドアローズ&サンズ」を立ち上げ、同社を退社した現在もディレクター/バイヤーを務める。
2017年にはアメリカGQ誌が選ぶ「Best New Menswear Designers」を受賞。
昨年の独立後もリーバイスとコラボレーションするなど幅広く活躍中。 また、自身のインスタグラム(@poggytheman)のフォロワー数は12万人を超え、 その動向が国内外から注目を集めるファッションアイコンの一人。

Photo:Ko Tsuchiya
Interview & Text:Satoru Yanagisawa
Edit & Direction:Miyoko Sano(Condé Nast Creative Studio)

THE ROOM

新作「CODE 11.59 by AUDEMARS PIGUET」を試着できる
デジタルアート体験空間『THE ROOM』開設中

Information

会期 : 10月末まで
会場 : オーデマ ピゲ ブティック 銀座 1階 map

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